【講師インタビュー】2021年未踏ジュニア スーパークリエイターに採択された経歴を持つ中橋先生

【講師インタビュー】2021年未踏ジュニア スーパークリエイターに採択された経歴を持つ中橋先生

高校時代に「2021年未踏ジュニア スーパークリエイター」に採択された経験を持ち、現在N Code Labo講師として新宿教室で指導にあたっている中橋遥斗先生にインタビューしました!

ゲーム開発の実績が評価され志望大学にも合格した中橋先生ですが、ここまでに至る道は平坦ではありませんでした。これからプログラミングを始めようとしているお子さまの参考にもなりますので、ぜひご覧ください!

中橋さんの活躍


人間の五感に関する最新の研究を娯楽転用したい

ーー中橋先生は現在、大学でどんなことを学んでいるのでしょうか。
僕は入試制度が特殊で、入学と同時に研究室がすでに決まっているんです。来年から、主に人間の「触覚」について研究をしている研究室に所属します。

例えば、体に電極を貼り付けて擬似的な触覚を体験させるという研究をしています。VR空間上でピアノのような楽器を演奏したとします。側から見ると、操作している人は手を動かしているだけに見えますよね。しかし、プレイヤー自身は実際にピアノを演奏しているかのように、鍵盤を叩く感覚が指に伝わるんです。このように擬似的に体験させることでデータを集め、VR上での触覚を現実のレベルに近づけていく、触覚ベースのVR系の研究をしています。

将来は、人間の五感に関する最新の研究を娯楽転用したいと考えています。触覚の最新技術をゲームに活用したら、もっと面白いものが作れるのではないかと思うんです。だから、入試の段階で触覚系の研究を行っている研究室を選びました。


ーー中橋さんは「[2021年未踏ジュニア]スーパークリエイター」で高校時代に未踏ジュニアに採択されていますね。応募のいきさつを教えてください。

僕の地元は愛知県名古屋市なのですが、小さい頃、名古屋市科学館に行くのが好きでした。科学館では、機械を見るのが大好きでした。そうしているうちに機械系に興味が湧き、両親に「小学校高学年になったらロボットをいじりたい」と伝えていました。

その後、僕は地元の塾に通い始めました。一見普通の塾ですが、「レゴ® マインドストーム® EV3」を使ったロボットプログラミングが学べる環境が整っているという、ちょっと珍しい塾でした。そこでチームを組んでロボットの大会に出場するなど、小学生から中学校を卒業するまで5年ほど取り組んでいました。

途中からC言語を使ってロボットを動かすロボットCにも触れていたのですが、中学生の時は大会の成績が振るわず全国大会の直前で敗退が続き、悔しい思いをしました。

この時、ロボットを組むことばかりでプログラミングはあまりしていないことに気がつきました。もっとプログラミングをちゃんと学びたいと思い、高校に入学してすぐプログラミングをきちんと学ぼうとインターネットで検索したところ、「競技プログラミング」の存在を知ったんです。高校1年生からの1年間は競技プログラミングに打ち込みました。

競技プログラミングとの出会い

競技プログラミングの、情報オリンピック夏合宿に参加した時のことです。参加する前は知らなかったのですが、実は日本代表候補などが参加する合宿でした。1週間の合宿で、最終日に発表を行うというものだったのですが、僕は「量子ゲート方式の量子コンピュータについての研究」という小難しい発表をしました(笑)。

合宿に参加していた他の生徒の発表も見て、個人的にすごいなと思った人のTwitterをフォローしました。その人は実は未踏ジュニアにも採択されていた人で、ここで初めて未踏ジュニアの存在を知りました。

高校1年生からの1年間は、先ほど言ったように競技プログラミングを頑張っていたのですが、僕には向いていないなと思ったんです。全然成績が振るわなかったですね。毎週コンテストがあり、自分のレートをあげる必要があるので疲弊してしまったんです。「もっと自由に開発したい」と思うようになったことがきっかけで、高校2年生の春にゲーム開発をスタートしました。

最初はPCスペックの問題でロードが遅く、作業が煩わしく思うことが多かったんです。この時にもっと高性能のPCが欲しい、そのための資金が欲しいという気持ちで未踏ジュニアに応募しました。初めての未踏ジュニアは2次面接まで進みましたが、残念ながら結果は落選。

ただ、この時に作ったゲームの改良を重ね、翌年はU-22 プログラミングコンテストに応募しました。このときにベスト40まで進出したことで、「自分の作ったゲームは面白いんだ」と自信を得ることができました。その後も、「自分ももっと面白いゲームが作りたい」と開発意欲が刺激され、改めて未踏ジュニアに応募し、無事採択されました。

ゲームをプレイする側からゲームを作る側へ

ーーゲームはプレイするのも作るのも好きな中橋先生。先生が好きなゲームを教えてください。
FPSなどのシューターゲームやRPG、戦略系のゲームなど、割と幅広くやっています。小学校低学年の頃はゲームを買ってもらえなかったので、高学年あたりから始めました。

ーープレイする側からゲームを作る側にまわるようになったきっかけを教えてください。
実は、未踏ジュニアに応募した作品が初めてのゲーム制作でした。あのゲームを思いついた時に「これは面白いな」と思いました。市販されているゲームに似ているものはあったのですが、自分の理想にぴったりのゲームにはなかなか出会えなかったので、自分の理想のゲームをプレイできるように自分で作ってみようと思いました。

ーーその時のプロジェクトは「Augment - リアルタイム音階推定を用いた音楽ゲーム」ですね。改めてどんなゲームか教えてください。
PCやタブレット端末にはマイクがついていますよね。そのマイクから拾う音の周波数を解析し、今どの音がこの環境で流れているのかを調べます。例えば、楽器を弾くと当然楽器から音が出ますが、その音を解析していわゆる「音ゲー」のタッチ判定を楽器で行えば、楽器をプレイ端末にしてゲームができるのではないかと考えたんです。
画面を叩くのではなく楽器を叩く音ゲーです。こんなゲームがあったら面白いんじゃないかなと思って開発しました。開発期間は1年。当時は高校2年生だったので、学校のある時期はなかなか開発は進められなかったですね。

ーー人生初めての開発で何が大変でしたか?
インターネットに掲載されていることは分からないなりに使えるのですが、全く新しい新規のことはインターネット上に情報が出回っていないので、手探りで大変でした。

プログラミングにおけるメンターの重要性

ーー未踏ジュニアに採択されるとメンターとプロジェクトを進めていくと思います。開発者にとってメンターとはどんな存在ですか。
ゲーム開発のプロジェクトなので、通常はUnityに詳しい方がメンターにつくのですが、僕のメンターさんはUnityを触ったことがない方だったので、Unityのことは質問することができなかったんです(笑)。
ただ、開発の手順・思考プロセスについて非常に深く学ぶことができました。「このゲームはこういうところが面白くて、ここが魅力だよね、だったらこの機能の実装はあまり関係がないよね。」と長期的な目で見た開発の仕方を学びました。

ーーもしもメンターがいなかったらどうなっていたと思いますか?
時間をかけたらいつかはうまくいったかもしれないですが、「大事なところをまず仕上げる、期限を設けて仕上げる」ということはできなかったと思います。無駄な機能を実装したり寄り道ばかりしていたと思います。まず仕上げる、一番大事な部分を作り上げゲームとして完成させることはメンターさんがいなかったらできなかったです。
受験の時期とも重なっていたのでスケジュールが大変でしたが、重要な部分を取捨選択する思考プロセス、何を大切にすべきかという開発論を身をもって学びました。

ーープロジェクトの進行過程はちょうど大学進学の準備と重なる時期だったと思います。受験とどう折り合いをつけて開発を進めていたのですか?
そうですね。未踏ジュニアのプロジェクトは、高3の春〜秋が開発期間でした。コロナ禍かつ受験も控えていたのでオンライン合宿にも参加していました。最低限の勉強はしながらプロジェクトが終わるまでは開発に全力であたり、プロジェクト終了後は勉強に専念していました。

ーー進学先はどうやって決めましたか?
「五感の研究」をしている大学に行きたかったので、その研究室がある電気通信大学を志望していました。未踏ジュニアで知り合った先輩が総合型で合格していたので、僕も総合型で受験しました。
面接では、未踏ジュニアのプロジェクト開発の経験をアピールしました。プログラミングの実績を使って受験できてよかったです!

ーー将来の展望などがあれば教えてください。
そうですね、五感の研究で得た技術や知見をゲームに応用してみたいですね。例えばBeat SaberのようなVR系のゲームは、スティックを振って画面上で何かが起こるだけですが、それを実際に物に触っている感覚、物に当たっている感覚があれば、より没入感が得られ楽しいんじゃないかと思うんです。今よりももっとリアルな表現、幅の広いゲームを作ってみたいですね。

他にも、リアル方面のVRとして災害救助ロボットへの転用もできると思います。あとは、人が立ち寄れないような場所の探査をさせて、表面のザラザラした感覚などをセンサーで読み取って信号化できれば、惑星探索にも応用できそうじゃないですか。五感の研究には未来があると思っています。そこで得た先進的な技術を、あえてゲームに応用してみたいです(笑)

英語・数学ができなくてもプログラミングはできる

ーーちなみに、勉強は得意だったんですか?数学・英語は得意ですか?
いえ、そんなに得意ではなかったです。中学の時に小説を読むのにハマりたくさん本を読んでいたので、国語の成績はよかった気がします。理系だったのですが、特段できるわけではなかったです。できるに越したことはないですが、できなくてもプログラミングは関係ないと思いますね。

「数学や英語ができないからプログラミングは諦めよう」と思うのは勿体無いです。英語ができなくてもプログラミングはできます。プログラミングは英語とはまた別の言語だと僕は思っています。「数学がちょっと苦手なんだよね」くらいだったら気にすることはないと思いますね。

ただ、数学や英語ができることのアドバンテージは凄まじいです。プログラミングができる人は元々勉強ができたり、素質がある人が多いと思います。反面、そういう人は分からない人の気持ちが分からない。僕は独学で勉強して「分からない」をたくさん通り抜けてきました。だから、分からない人の気持ちが凄く分かります。「分からないを分かるにするプロセスが理解できている」のが強みです。分からないならとことん付き合うので、一緒にがんばりましょう!

プログラミングを学びたい子どもたちへ

ーー中橋さんが思う、プログラミングの面白さとは?
頭の中で思っていたものが、形になるというところですね。デバイス1つ、パソコン1つあれば、画面の中でなんでもできるのが面白いですね。

ーープログラミングを難しいなと思っている子供たち、独学してうまくいっていない子供たちへ、何かアドバイスをするとしたら?
「好きなことに正直にやろう」ですかね。自主制作、オリジナルゲーム制作にどんどん進んで欲しいです。Unityは機能がたくさんあるので、自分のやりたいことに近いもの、興味のあるものを作りながら制作に必要な機能を勉強していくのがおすすめです。私もそうやって勉強していったので、好きなこと、やりたいものを開発していくのが良いと思います。

N Code Laboには色々な経験をしている講師がいるので、好きなこと、やりたいことを伝えれば、それにつながる道を講師が示してくれると思います。「自分でゲームが作りたい人」「作りたいゲームがある人」はぜひ僕が担当したいですね!

ーービジュアルプログラミングからコーディングへの移行はどうでしたか?
最初は戸惑いましたが、書いてるうちに慣れました。
やりたいことが無い人は競技プログラミングがおすすめです。小さな処理を正確に早く書けるかを競うのですが、今はその経験が生きています。製品のプログラムの中の小さな処理を正確に早く書くことができるようになるので、コーディング力が上がり、記述に悩まなくなりました。問題を解くのが好きな人にはおすすめですね。

ーー今、N Code Laboで講師として指導していますが、やりがいを教えてください。
僕は普段、「こういうのをつくりたい!」と言ってもらえたら、じゃあそれはどうしたら実現できるかな?と生徒に問いかけます。一生懸命考えて、自分で言葉にできた姿を見ると、開発できるようになっているな、指導して良かったな、1人の開発者がまた生まれたなと思えるので嬉しいですね。もっとゲーム開発人口を増やしていきたいです。

ーー講師から学べるメリットは?
「本を読め、とにかく書け」では分からないことが多いです。「とりあえず書いたら動いた」では良くないと思っています。N Code Laboだと隣に先生がいて解説してくれるので、現代の教材の問題点を解決していると思いますね。

ーー最後に、N Code Laboでは今度は中橋さんがメンターとして生徒の制作を支援していくことになります。どんな存在でありたいですか。
生徒と一緒に考えてあげたいですね。生徒と一緒に解決に向けて思考していきたいです。「こういうの作りたいんですよ」と言われるとやる気が出ますね。

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